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GROOVE X 技術ブログ

チームの自己組織化を進める活動

こんにちは、GROOVE Xのスクラムマスターの1人、niwanoです。再び登場しました! これはGROOVE X Advent Calendar 2024の16日目の記事です。
今日は、私がスクラムマスターとして2024年度に取り組んだ「チームの自己組織化を進める」というテーマについてお話しします。

自己組織化チームとは何か?

マネジメントの父であるピーター・F・ドラッカーは、『Management Challenges for the 21st Century(日本版: 明日を支配するもの)』の中で、「これからますます多くの人たち、とくに知識労働者のほとんどが、自らをマネジメントしなければならなくなる。自らを最も貢献できるところに位置づけ、つねに成長していかなければならない。」と述べています。 この考えは、スクラムガイドに記載されている「スクラムチームは、自分たちで作業を管理できるように組織によって構成され、その権限が与えられている」という記述に通じるものがあります。

我々スクラムマスターは、"自己組織化チーム"の特徴を以下のように解釈しています。

自己組織化チームの特徴

自律性
チームメンバーはそれぞれの役割やタスクを主体的に決定し、実行します。

協調性
メンバー同士がコミュニケーションを取りながら、互いのスキルや知識を活かして課題を解決します。

適応性
状況や環境の変化に応じて、優先順位やアプローチを柔軟に変更します。

責任共有
チーム全体が成果に責任を持ちます。個人の責任だけでなく、全体としての成功を重視します。

簡単に言えば、チームが主体的に動き、すべてを自分たちで決めて進めるということです。 主体性を持つことで責任が生まれますが、同時にアジリティが高まり、多くの試行を重ねることで成功確率が向上するのではないか、という考え方です。

自己組織化チームのメリットとは?

自己組織化チームにはどんなメリットがあるでしょうか。

自己組織化チームのメリット

迅速な意思決定
チーム内で迅速に意思決定が行えるため、外部承認の遅延が減少します。

高いモチベーションと成長
自律性が高い環境では、メンバーのエンゲージメントやモチベーションが向上します。

創造性の向上
多様な視点が交わることで、革新的な解決策が生まれやすくなります。

適応力の強化
市場やプロジェクトの変化に迅速に対応できる能力が向上します。

自己組織化されたチームでは、メンバーのエンゲージメントや創造性が向上する可能性が高まります。 一方で、自己組織化が進んでいないチームを想像してみると、次のような問題が発生する可能性があります。

  • 指示待ちが多く、自主性が欠ける。
  • 自分の能力を発揮する機会が少なく、達成感が得られない。
  • 人間関係が希薄で、チーム内の信頼が不足する。

こうした状況に心当たりがある方も多いのではないでしょうか。 私自身も前職で同じような経験があり、「こういうの、あるよね」と共感する場面が少なくありませんでした。

エセ自己組織化に注意

ただし、注意が必要です。「エセ自己組織化」という状態に陥るリスクがあります。 これは、表面的には自己組織化のように見えても、実際にはその本質を欠いている状態を指します。たとえば、以下のようなケースが挙げられます。

  • 責任を互いに押し付け合う。
  • 経営陣やリーダーがチームを信頼せず、権限を十分に与えない。
  • チームが自主的に改善しようとしない。

いくら自己組織化を掲げていても、このような状況が社内で発生している場合、それは「エセ自己組織化」と呼ばざるを得ません。

誰が最初に「エセ自己組織化」という言葉を使い始めたのかはわかりませんが、非常に的確な表現ですね!

自己組織化とルールがない自由な組織は違う

自己組織化とは「なんでも自分たちチームが決めて実行できる」という状態を指しますが、これは「自由気ままに行動していい」という意味ではありません。

項目 自己組織化 ルールがない自由な組織
目的・目標 明確で共有されている 曖昧または不明確
ルール・枠組み 最低限のルールがあり柔軟性もある ルールがほとんど存在しない
協調性 チーム全体での協力が重視される 個人主義的で連携が弱い
役割分担 役割と責任が明確 役割が曖昧で責任が不明確
意思決定 メンバーに権限が委譲され効率的 混乱しやすく、遅れることが多い
成長・改善 フィードバックの仕組みがある 改善の仕組みが不十分

スタートアップ企業では「自由な組織風土」という表現をよく見かけますが、「無秩序」であって良いという事ではありません。 弊社でも自由な組織風土を大切にしていますが、それは「自由に意見を言い合える環境」を指します。 CEOも、「自由に開発していいよ、なんて一言も言ったことはない」と明言しており、まずは守・破・離の「守」をしっかり実践することが重要だと語っています。

現在、私たちは自己組織化の「守」をしっかりと実行するフェーズにあります。 この基盤を固めたうえで、さらに良い手法やアイデアが見つかったときには、自由な意見を積極的に取り入れる環境を整えるつもりです。

ハックマン権限マトリクス

ハックマン権限マトリクス(Hackman Authority Matrix)は、チームの意思決定や権限範囲を明確化するフレームワークです。 このマトリクスは、組織心理学者J.リチャード・ハックマン(J. Richard Hackman)によって提唱され、チームの自律性や自己組織化の度合いを測定する際に役立ちます。

GROOVE Xオリジナルマトリクス

このハックマン権限マトリクスに独自の要素を加えたオリジナルのマトリクスをスクラムマスターで作成しました。

オリジナルハックマン権限マトリクス

このマトリクスでは、チームが「0」から「4」の段階へ進んでいく過程を可視化しています。各段階の要件をクリアして定着すると、その称号がチームに付与されます。

0: 状態未定義
1: マネージャー主導のチーム
2: 自己管理型チーム
3: 自己設計型チーム
4: 自己統治型チーム

スクラムチームの目標は、「3. 自己設計型チーム」です。このマトリクスを活用して、チームの現在地を定期的に評価しています。

ソフトウェアチームが苦手にしていること

ソフトウェアチームの多くが、"メンバーのマイナス面の改善(ギャップフィードバック)"を苦手にしているようです。
マイナスなことは誰でも言いたくないですよね。
フィードバックカルチャーをつくる」でも紹介しましたが、メンバーの成長につながるフィードバックはギャップフィードバックと考えているので、苦手を克服してもらいたいです。

チーム転職が一般的になる時代がくる?

これは私の考えです。 自己組織化レベルの高いチームが増えることで、将来的には「チーム単位での転職」をサポートするサービスやエージェントが登場するかもしれません。

自己組織化されたチームは、プロジェクト管理やタスクの遂行効率が高いだけでなく、問題解決能力やイノベーションの創出能力も優れています。 企業にとって、すでに確立された高機能なチームを採用することは、個人を一人ずつ採用してチームを構築するよりも効率的で、即戦力としてのメリットが大きいと考えられます。

とはいえ、もし自分の会社のチームがチーム単位で転職してしまったら、大変なことになりますね!w

まとめ

スクラムマスターは、チームや組織の成長を最も実感できるポジションだと私は考えています。 このような活動に日々携われることを、本当に幸せに感じています!

これからも、チームの可能性を最大化し、組織により良い変化をもたらすために努力していきたいと思います。 スクラムマスターとしての役割を通じて、多くのチームメンバーと共に学び、成長し続けられることを楽しみにしています。

一緒に働く仲間を募集中!

いかがでしたでしょうか? 今回は、チームの自己組織化を強化する活動についてお話ししました。 これからも開発チームの自己組織化を進め、より楽しく、魅力的な開発組織を作っていきます。

弊社では、そんな開発チームで働く仲間を募集中です。 ぜひご応募ください!

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