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GROOVE X 技術ブログ

PyCon JP 2025 に参加しました!

PyCon JP 2025 参加レポート

こんにちは、GROOVE X SWチームの Junya Fukuda です。9月26日から28日に広島の平和記念公園 国際会議場で開催されたPythonというプログラミング言語のカンファレンス「PyCon JP 2025」にスピーカーとして参加してきました。 GROOVE XではさまざまなケースでPythonを使用しており、情報収集・情報発信のための参加です!

PyCon JP 初の地方開催で、世界各地から約600名が集まりました。この3日間の学びをレポートします!

  • PyCon JP 2025 https://2025.pycon.jp/ja
  • 場所:広島平和記念公園 国際会議場
  • 期間:2024年9月26日〜27日 メインカンファレンス, 28日 スプリント

PyCon JPは初の広島開催!

今年のPyCon JPは初の広島開催ということもあり、会場ではスタッフのみなさんと全国各地の開発者が入り交じって活気に満ちていました。参加者どうしの距離が近く、廊下や昼食のテーブルでも自然とコミュニケーションが始まる雰囲気が印象的でした。

その雰囲気は、カンファレンスのオープニングで紹介された Pacman rule というのが参加者同士の交流を促進しているように感じました。 Pacman rule というのは、初参加の人や初対面の人が話の輪に入りやすくなるよう、席を空けておきましょう!というアイディアです。 知らない土地でのカンファレンス参加者として、とてもありがたかったです。

https://psychsafety.com/the-pac-man-rule/ より

個人的にもはじめての広島だったのですが、会場が平和記念公園内の施設ということもあって合間に観光も楽しむこともでき、会場は立地も大変良く、充実した時間を過ごすことができました。

会場のある広島平和記念公園

またジョブボードに弊社イベント LOVOTech Night 2026きさらぎ: 温かいロボット開発の最前線 - connpass の資料を置かせていただきました。ありがとうございます。

ジョブボード

2026年2月に開催のオンラインイベント

キーノート:FastAPI の作者 Sebastián Ramírez 氏と #100日チャレンジ著者大塚あみ氏

【Day 1 Keynote】 Sebastián Ramírez 氏 Behind the scenes of FastAPI and friends for developers and builders

Sebastián Ramírez 氏のキーノート

初日のキーノートでは FastAPI の作者 Sebastián Ramírez 氏が登壇されました。

PythonのWeb Frameworkとして急速に広がり、多くの著名な企業でも採用されているFastAPI。氏はその設計思想や開発の舞台裏、またそれらに関わる彼自身の個人的なキャリアも交えてお話しされていました。FastAPIは利用者の体験を最優先に考えて設計されており、型ヒントの活用やドキュメントの充実・多言語化対応といった 使いやすさ の工夫が多く見られます。氏は、こうした方針について自身の経験を交えて紹介されていました。

またトーク最後の質問の中で「大きくなったFastAPIの開発を続けるモチベーション」について尋ねられた際には、「コミュニティからのフィードバックと、FastAPIを使って素晴らしいプロダクトを作っている開発者たちの成功事例が最大の原動力」と答えられていて、オープンソースコミュニティの力強さを改めて感じました。こんなに大きなプロジェクトになっても「使ってるよ!」「FastAPI大好きです」といったポジティブなフィードバックをもらえることが何より嬉しいという回答が大変印象的でした。

また同時通訳も素晴らしく、英語が苦手な私でも内容をしっかり理解でき、大変助かりました。普段わりと早口なご本人は「こんなにゆっくりしゃべったのははじめて」とおっしゃられていたそうです(笑)。

憧れのSebastián Ramírez 氏。気さくな方で会期中コミュニケーションをとらせていただきました

【Day 2 Keynote】 プログラミングの未来を駆ける!~2年間の挑戦が見せてくれた、プログラミングのこれから~

#100日チャレンジ 毎日連続100本アプリを作ったら人生が変わった | 日経BOOKプラス の著者である大塚あみ氏の講演も大変興味深いものでした。

大塚あみ氏のキーノート

わたしは氏の著作をは未読だったのですが、大学生の時に挑戦された生成AIを利用した「#100日チャレンジ」のモチベーションは誰もが思う「課題をやりたくない」という気持ちから始まったそうです。最初は小さなアプリを作ることから始め、さまざまな論文を読まれて最適なプロンプトを模索しながら、最終的には100日間で100本のアプリを作成されたとのことです。何よりも継続力・実行力に大変驚きました。

また、このPyCon JP 2025の基調講演のオファーをいただいたのがちょうど開催まで100日だったそうで、新たな100日チャレンジとして、カンファレンスに合わせてご自身のメモアプリを開発・公開されたとのことです。

普段から細かくメモをとること(もともとLINEでメモを取られることがあったそうです)が著作にもつながったと語られており、氏のメモの取り方も非常に参考になりました。また、大塚さんはスプリントにも参加され、実際に手を動かしながら学びを深める姿勢にも刺激を受けました。

セッションのトピック・自分の発表

自分の発表準備に追われていたこともあり、すべてのセッションを回れたわけではありませんが、見れたいくつかを紹介します。

PEP 750で提案されたt-string

招待公演の青野高大氏

PEP 750 – Template Strings | peps.python.org を共著した青野高大氏による招待講演です。Python 3.14の新機能を横断的に紹介しつつ、t-strings(テンプレート文字列)のユースケースを丁寧に掘り下げていました。

t-stringsf-string に似た書き心地で、template: Template = t"Hello {name}" のように書くと即時評価のかわりにTemplateオブジェクトが生成されます。すぐに使う文字列ではなく、開発者が後で好きなように加工・チェック・再利用できるのが「Template」というオブジェクトです。

SQLインジェクション対策や国際化対応など、文字列を安全に扱いたい場面で活用できそうです。詳細は上記資料にまとまっているので、ぜひ目を通してみてください。

t-strings のまとめ

Python and Friends - embedding Python

Anthony Shaw氏による「Python and Friends - embedding Python」では、Python関数を型安全に C#で呼び出すCSnakesが紹介されました。

Pythonの代替しにくいユースケースとして、データ分析や機械学習の用途が挙げられていました。 CSnakesを利用し C#アプリケーションにPythonを組み込むことで、Pythonの機能を活用しつつ、 C#の既存リソースを活用できたり利点を享受できる点は魅力的だと感じました。

また裏話として氏のトークは急遽採択されたそうなのですが、急なトークに関わらず非常に完成度が高く大変驚きました。

Anthony Shaw氏と青野高大氏。Anthonyさんは毎年PyConJPでお会いできるPythonヒーローのひとり

また、2日目のLT「LLM、日本語ウマい?」も日本語が少しわかる海外からの参加者の視点でとてもおもしろかったです。

会場に笑いが巻き起こっていました

Streamlit は社内ツールだけじゃない!PoCの速さで実現する"商用品質"の分析SaaSアーキテクチャ

Streamlit というPythonだけで手軽にWebアプリケーションを作れるフレームワークを使ったプロダクションでの活用事例のトークです。

Webアプリケーションを作るにはフロントエンドの技術(ReactやVue.jsなど)も必要ですが、Streamlitを使うとPythonだけで完結のが魅力的なフレームワークです。サクッとできてしまいすぎて、「これをプロダクションで使っていいのかな...足りないものが色々あるぞ...」となりがちでしたが、懸念を解決してくれるトークで大変勉強になりました。

Yuki Furukawaさんのトーク

トークはキーワードを中心に構成されていてとても聴きやすく、引き込まれる内容でした。今後の自分のトークの参考させていただきたいと思います。

所属されている Recustomer さんのスポンサーブースでは、同じ会社から登壇した5名(!)のみなさんとも交流でき、大変有意義な時間を過ごせました。ありがとうございました!

Recustomerさんのスポンサーブースにて

タスクって今どうなってるの?3.14の新機能 asyncio ps と pstree でasyncioのデバッグを

発表前の緊張したようす

わたしのトークでは、Python 3.14で追加された asyncio の新しいタスク可視化機能について紹介しました。具体的には、コマンドラインツール asyncio psasyncio pstree の使い方と、内部APIである呼び出しグラフ(Call Graph)取得APIの概要を解説しました。 asyncio psasyncio pstree は、 PEP 768 – Safe external debugger interface for CPython | peps.python.org によって、Pythonプロセスに外部からアタッチして実行中のタスクの状態を調査できる機能が追加されたことで、 asyncio にも拡張された機能です。これにより、デバッグやパフォーマンス解析が格段にやりやすくなりました。

詳しくは、以下の記事でまとめていますので、ぜひご覧ください。

また、この機能を使いやすくするツールを作ってトークで紹介していたのですが、メインカンファレンス終了後のスプリントにて、正式名称をを決め、 PyPI に公開することもできました。 トーク中では TaskScope と仮称していましたが、議論をさせていただき atv(async task viewer) に決めました。 名称を検討する際には以下のポイントを大切にしました。

  • 英語ネイティブの方にも意味が伝わること(わかりにくいとフィードバックをいただいた)
  • TUIツールなのでタイピングしやすいこと
  • PyPIでまだ使われていない名前であること

ぜひ気軽にさわっていただけると大変嬉しいです。

atv(async task viewer)

まとめ

PyCon JP 2025は、Pythonコミュニティの熱量を直に感じられるとても楽しいイベントでした。最新技術のアップデートを受け取り、開発者同士が刺激を与え合える場の大切さを改めて実感しています。社内でもキャッチアップした情報を共有してよりよく活用したいと思います。

また、来年も広島開催との発表があり、すでに次回が楽しみです!来年の概要はこちらです。

最後になりますが、GROOVE X では引き続き採用を行っています。気になる方はぜひ以下のリンクから!

採用情報 | GROOVE X株式会社