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GROOVE X 技術ブログ

スクラムマスターはどこまで「人の問題」に関わるべきか

こんにちは。GROOVE Xのスクラムマスターの niwano です。
スクラムマスターと「領域人事」の兼任についての第3回です。
(この記事はAIと一緒に書いています。)

スクラムマスターが感じる違和感

スクラムマスターをやっていると、必ず一度はこういう場面に出会います。

  • チームの空気が重い
  • 何かが噛み合っていない
  • 明確なルール違反はない
  • でも、このままではまずい気がする

このときに湧いてくる違和感は、だいたい正しいです。
そして同時に、こんな迷いも出てきます。

これはスクラムの問題なのか? 人の問題なのか? それとも、踏み込んではいけない領域なのか?

この問いに答えを出せないまま時間が過ぎると、

  • 放置して悪化する
  • 介入しすぎて信頼を失う
  • どちらにしても「やりづらい人」になる

という、あまり嬉しくない未来が待っています。


まず大前提:スクラムマスターは裁かない

この回で一番伝えたいことを、最初に書きます。

スクラムマスターは、人を裁かない

  • 誰が正しいかを決めない
  • 誰が悪いかを決めない
  • 評価もしない
  • 処遇も決めない

これは「優しさ」の話ではありません。
役割の話です。

スクラムマスターが裁き始めた瞬間、
チームにとって「安全な存在」ではなくなります。


「人の問題」に見えるものの正体

現場で「人の問題」と呼ばれているものの 多く は、
実は次のどれかです。

  1. 期待値のズレ
  2. 役割や責務の不明確さ
  3. 意思決定プロセスの欠如
  4. フィードバックの欠如
  5. 仕組みが現実に合っていない

つまり、

個人の性格や能力の問題ではなく、構造の問題

であることがほとんどです。

スクラムマスターが関わるべきなのは、
この 「構造として扱える部分」 です。


ここまでやる:スクラムマスターが踏み込んでいい領域

では、具体的にどこまでなら踏み込んでいいのか。
私が意識しているラインは、次のあたりです。

1. 事実を整理する

  • 何が起きているのか
  • いつから起きているのか
  • 誰が困っているのか
  • どの場面で再現するのか

感情や評価を入れず、事実だけを並べる

2. 問題を構造に翻訳する

  • それはどのプロセスで起きているのか
  • どのルールが曖昧か
  • どの期待値が共有されていないか

「Aさんが悪い」ではなく、
「Aさんがそう振る舞わざるを得ない構造」を探します。

3. 対話の場を設計する

  • 1on1か
  • チームか
  • ワークショップか
  • レトロスペクティブか

誰が、どこで、どう話すべきか を考えるのが仕事です。

4. 仕組みとして試す

  • ルールを変える
  • フローを変える
  • ロールを明確にする
  • 試行してみる

「正解を決める」のではなく、
仮説検証として試します。


ここから先はやらない:明確な線引き

一方で、明確にやらないこともあります。

1. 個人の善悪を判断する

  • 「あの人は協調性がない」
  • 「やる気がない」
  • 「向いていない」

これはスクラムマスターの仕事ではありません。

2. 処遇や評価に踏み込む

  • 評価を下げるべきか
  • 配置を変えるべきか
  • 叱るべきか

この瞬間、スクラムマスターの中立性は壊れます。

3. 穏便に済ませるための仲裁

  • 表面的に謝らせる
  • 本質を曖昧にしたまま丸く収める

短期的には楽ですが、
組織に技術的負債を残します。


「従業員間」と「従業員-会社間」の違い

ここで重要な切り分けがあります。

従業員間の問題

  • コミュニケーションの摩擦
  • 役割や期待値のズレ
  • チーム内の衝突

👉 一次受けとして関わる

従業員-会社間の問題

  • ハラスメント
  • コンプライアンス
  • 労務・契約
  • 評価・処遇

👉 即座に人事・上司へエスカレーション

ここを曖昧にすると、
スクラムマスター自身も、組織も守れません。


「感情に寄り添っていないように見える」問題

よく言われます。

もう少し気持ちに寄り添ってもいいのでは?

これは間違いではありません。
ただし、注意が必要です。

スクラムマスターがやるべきなのは、

  • 感情を理解する
  • 感情を尊重する

ことであって、

  • 感情を優先する
  • 感情で判断する

ことではありません。

感情に寄り添うのは手段であり、
目的はあくまで スクラムが機能する状態を作ること です。


介入を減らすと「仕事してない」ように見える問題

もう一つ、地味に辛い問題があります。

何もしていないように見える

これは、ある意味で成功の兆候です。

  • チームが自分で話し合うようになる
  • 問題がその場で解消される
  • スクラムマスターが呼ばれなくなる

スクラムマスターの仕事は、
見えなくなっていく仕事 でもあります。

この記事のまとめ

  • スクラムマスターは人を裁かない
  • 「人の問題」の多くは構造の問題
  • 踏み込むのは、事実・構造・対話・仕組みまで
  • 個人評価や処遇には踏み込まない
  • エスカレーションは責任放棄ではない
  • 介入を減らすことがゴール

次回は、いよいよ最終回 「スクラムマスターと領域人事は、いずれ不要になる」 について深堀します。