こんにちは。GROOVE Xのスクラムマスターの niwano です。
スクラムマスターと「領域人事」の兼任についての第2回です。
(この記事はAIと一緒に書いています。)
この記事では、なぜ『領域人事』から『組織開発ファシリテーター』に現場での呼び方を変えたのかを説明します
「それ、人事じゃなくないですか?」という正論
第1回を読んだ人の中には、こう思った方も多いはずです。
評価もしない
報酬も決めない
異動も決めない
労務判断もしないそれって、人事なんですか?
これは完全に正しい疑問です。
正直に言うと、私自身も最初は同じことを思っていました。
実際、現場でこの役割を説明すると、
- 「それって人事っぽいけど、人事じゃないですよね」
- 「スクラムマスターが組織開発やってるだけでは?」
と言われることがよくあります。
ではなぜ、それでもこのロールを 「領域人事」 と呼び続けてきたのか。 そして今、あえて呼び方を変えたのか。
今回はそこを掘り下げます。
「人事」という言葉が持つ強すぎる前提
多くの人にとって「人事」という言葉は、次のようなものを想起させます。
- 評価・査定をする人
- 昇給・昇格を決める人
- 配置転換や採用に関与する人
- 場合によっては、解雇の判断にも関わる人
つまり、
個人のキャリアや生活に直接影響する権限を持つ存在
です。
実は弊社の人事もここまでの権限は持っていませんが、人事はそういうものだと考えられることが多くあります。
この前提がある状態で、
スクラムマスターが「領域人事を兼任します」と言うと、
- 本音を話して大丈夫なのか?
- 評価に影響しないか?
- どこまで信用していいのか?
という 警戒心が生まれるのは自然です。
これは、スクラムマスターの能力や人格の問題ではありません。
ロール設計の問題です。
なぜ「人事権を持たない」ことを明確にしたのか
私達が、そこで最初にやったことは、とてもシンプルでした。
人事権は一切持たないことを明確にする
- 評価しない
- 決定しない
- 判断しない
- 裁かない
この4つを、かなり意識的に切り分けました。
なぜなら、
スクラムマスターが価値を出せるのは 「決めること」ではなく「整えること」 だからです。
人事権がないからこそ扱える「人の問題」
実際にやってみて、強く感じたことがあります。
それは、
人事権がないからこそ、話してもらえることが確実にある
ということです。
例えば、
- チーム内で感じている違和感
- 上司や制度に対するモヤっとした感情
- 「誰かが悪いわけじゃないけど、うまくいっていない」話
こういった意見は、評価者や決定権者にはなかなか集まりません。
一方で、
- 評価に影響しない
- その場で結論を出さない
- 構造やプロセスの話として扱う
という前提があると、
「整理のための対話」 が成立します。
これはカウンセリングとは違います。
組織開発としての対話です。
「領域人事」という名前が生んだ副作用
ただし、問題がありました。
それが、 「人事」という言葉が持つイメージが強すぎた ことです。
実態としては、
- 人事権はない
- 組織開発に近い
- スクラムマスターの延長線上の仕事
なのに、名前だけが「人事」だと、
- 余計な配慮を生む
- 距離を置かれる
- スクラムマスターとしての中立性に疑念が出る
ということが起きました。
結果として、
名前が役割の邪魔をしている
状態になっていたのです。
「組織開発ファシリテーター」の誕生
そこで、現場での呼び方を 「組織開発ファシリテーター」 に変えました。
この名前に込めた意味は、かなり明確です。
- 組織の問題を扱う
- でも、決定はしない
- プロセスと対話をファシリテートする
- 最終的には、役割を分散・縮小する
つまり、
組織が自分で回るようになるための黒子
です。
公式な文脈(取締役会など)では「領域人事」という名称を使っていますが、
現場での通称を変えたことで、
- 話しかけやすさ
- 役割の誤解の少なさ
- スクラムマスターとの切り分け
は、明確に改善しました。
スクラムマスターとのロール分離ルール
スクラムマスターと領域人事(組織開発ファシリテーター)は、 扱うテーマが重なることがあります。
ただし、
「同じ人が対応する」ことと
「同じロールで判断する」ことは別です。
私たちが意識しているのは、
ロールを混ぜないというよりも、
判断責任と権限のモードを混ぜない
という点です。
- プロセスや構造として扱える問題 → スクラムマスターとして扱う
- 組織横断・センシティブな問題 → 領域人事(組織開発ファシリテーター)として扱う
- 評価・処遇・会社判断 → 自分は扱わない
同じ場にいることはあっても、どの帽子で話しているかは常に明確にすることを心がけています。 (うまくいかないときもありますけど。)
それでも残るリスクと、割り切り
もちろん、この設計にもリスクはあります。
- 完全に誤解をゼロにはできない
- 工数が増えやすい
- 「結局なんでも屋に見える」瞬間がある
それでもやる理由は一つです。
今やらないと、もっと悪い形で問題が顕在化するから
このロールは万能ではありません。 だからこそ、
- 過渡期の暫定解であること
- 永続させないこと
- 役割を増やして手放すこと
を前提にしています。

この記事のまとめ
- 「人事権のない人事」は言葉としては矛盾して見える
- しかし実態は、人事とは別のロールである
- 人事権がないからこそ扱える人の問題がある
- 名前は役割理解に大きな影響を与える
- これは完成形ではなく、過渡期の設計である
次回は、 「じゃあ、スクラムマスターはどこまで人の問題に関わるべきなのか?」 という、より実践的で一番悩ましい話に入ります。
このシリーズについて
- 第1回:なぜスクラムマスターが「領域人事」を兼任することになったのか
- 第2回:「人事権のない人事」は矛盾か?(本記事)
- 第3回:スクラムマスターはどこまで「人の問題」に関わるべきか
- 最終回:スクラムマスターと領域人事は、いずれ不要になる