こんにちは。GROOVE Xの人事部に所属している貫戸です。
突然ですが、みなさんは「コード」が書けますか?
私は書けませんし、読めません。正直なところ、これから一からプログラミングを勉強するつもりもありません。
そんな「エンジニアスキルゼロ」の私が、今回、AI(ClaudeやGemini)を相棒に、自作の業務効率化ツールをいくつか作ってみました。非エンジニアの私がなぜツールを作ろうと思い、どうやって形にしたのか。その舞台裏をお話しします。
100%マッチするサービスは、なかなか見つからない
人事をはじめとする管理部門では、日々たくさんの外部サービスを使って業務を効率化しています。世の中のサービスは年々進化していて、本当にありがたい限りです。
ただ、「自社のこの運用に100%マッチしている」というサービスには、なかなか出会えません。どれも惜しくて、いわゆる「かゆいところに手が届かない」状態です。
これまでは、その「あと少し」の隙間を、人が手作業でデータをコピペしたり加工したりして埋めていました。これが地味に手間ですし、手作業ゆえに「ヒューマンエラーが起きたらどうしよう」という不安も常にあります。
「使い慣れたスプレッドシートやマクロで、なんとかするしかないのかな」と、半ば諦め、自分の手を動かすスピードや精度をより高めようとしていました。
「どうせ、そっち側の話」と割り切っていた私
実を言うと、私は新しいテクノロジーが登場すると、なんとなく自分に関係がないことと思う節がありました。 AIの発展など、新しいものが登場するスピードはあまりに速い上に高度。だから「最先端のものはその筋にいる人が関係するもの」と漠然と自分ごとにせず、蚊帳の外においている感じでした。
社内のエンジニアさん達が「AIがさ」と盛り上がっているのを見ても、「とはいえ、ある程度専門性を持っている人のためのものでしょう」「こういう高度なテクノロジーを扱うのはエンジニアの仕事」と、自分は門外漢だと割り切っていました。今にして思えば、割り切ることで自分のコンフォートゾーンを守っていたのだと思います。
そんな私の心を動かしたのが、ある日のオフィスでの一幕でした。
転機:「あれ、貫戸さんも使えるよ」
よくお話しするエンジニアさんが「あれ、貫戸さんも使えるよ」とAIを勧めてくれました。
とはいえ、普段エンジニアさんと話していると、意味のわからない単語もたくさんでてきて、到底、詳細まで理解できない私が使えるわけがない、お金の無駄なのに、すすめてくれるなんて、「エンジニアさんって、非エンジニアのリテラシーの低さをわかっていない」とさえ思いました。
一方で、先端テクノロジーを使いこなす人への、嫉妬に近いうらやましさを少し感じていたので、「ダメ元でやってみよう」とAIをインストールすることにしました。 AIに何をどう打ち込めば動くのか、なにもわかりませんでしたが、なんとなく、触ってみました。
「えいやっ」から始まった、ツールづくり
最初にチャレンジしたのは、「従業員の勤務時間の把握と分析のためのツールづくり」でした。 弊社には裁量労働制、フレックスタイム制、変形労働時間制など、メンバーに合わせた多様な働き方があり、市販の勤怠管理システムから「私が本当に見たいデータ」を一発で出すのは難しい状態でした。
最初はAIに「何をどう伝えればいいのか」がまったく分かりませんでした。それでも「とにかく困っていることを、そのまま日本語でぶつけてみよう」と、思い切って入力してみたのです。
すると、やり取りは意外なほどスムーズに進み、欲しかったツールがHTMLで形作られていました。そこから、試して、検証して、足りないものをみつけて、AIにフィードバックして、つくりなおす、を繰り返すと、1時間半ほどでイメージしていたものが完成してしまいました。
なぜ、想像していた以上にスムーズに進んだのか。それは「頭の中に私が欲しいものの完成図がある程度イメージできていたから」だと思います。HTMLがなになのか、どういう仕組みなのかはわかっていなかったですが、「どんな時に使って、最終的にどんなデータが画面に出てほしいか」というゴールが明確だったからこそ、私のイメージを、AIを使って形にできたのだと思います。
ちょっとテンションがあがり「もしかして、みんなの『めんどくさい』も、AIで解決できるのでは?」と考えた私は、チームメンバーに「何かめんどくさい作業ってない?」と聞いてみました。「なにがめんどくさいのか」「なにに時間がかかっているのか」などざっくばらんにリアルな声を集め、自分の領域だからこそ分かる業務理解を活かして、効率化ツールをAIと一緒に作っていきました。
たとえば、定型のメール文面や文書を、コピペよりも速く・確実に用意できるツール。あるいは、勤怠データの誤入力を見つけ出すツール。どれも派手ではありませんが、毎日の「ちょっとした手間」や「見落としたらこわい確認作業」を、地道に軽くしてくれるものばかりです。
AIを動かす最大のコツは「自分のためのローコンテキスト」
試行錯誤の中で気づいた、私なりの「AIを使いこなすコツ」があります。それは、AIに対して徹底的に「ローコンテキスト」で話すことです。 AIには、人間同士のような「言わなくても察してよ」は通じないので、背景や前提知識から丁寧に伝えることは大切です。 しかし、この「ローコンテキストで細かく伝える」作業は、AIのためだけではなく、何より自分自身のためでもあった、ということに気付きました。
作りたいもの、イメージしているものを言葉にするプロセスそのものが、自分の頭の整理になりました。「私はここを自動化したかったんだ」「最終的にはこのデータがこう見えればいいんだ」と、言語化することで、ぼんやりしたイメージの輪郭がどんどん具体的になっていきました。AIに伝えるための言葉は、自分自身のゴールを研ぎ澄ますための言葉でもあったのです。
AIは「課題を発見できた人」が使うべき道具
実際に手を動かしてみて、強く実感したことがあります。 当たり前かもしれませんが「AIは決してエンジニアさんだけのものではない」ということです。
もちろん、高度で専門的なシステムを構築するのはエンジニアさんの領域です。しかし、日々の業務の中の「ここが不便だな」「もっとこうなればいいのに」という小さな引っかかりをスルーせずに、「課題」として少し捉えてみる...大袈裟かもしれませんが、いわゆる「課題発見」できる人こそAIの価値を発揮できるのだと思います。
現場のリアルな課題や事情を知らなければ、どれだけ技術があっても、本当に有益なものは作れません。逆に「課題を見つける力」と「こうしたいという理想のゴール」さえあれば、コードが書けなくてもAIがその隙間を埋めてくれます。
使ってみて改めて思いました。「AIも結局は道具なんだな」と。 道具は、置いておくだけでは何も生みません。とにかく使ってみること。使っていれば、そのうち手が慣れていきます。そして、その道具を役立てられるかどうかは、使う自分次第だと痛感しました。
テクノロジーが変わっても、大先輩たちが教えてくれたこと
「置いておいても仕方ない、使ってみよう」。そう思えたとき、ふと思い出したのは、新卒で入社した会社の先輩たちの姿でした。
私の親よりも年上の大先輩たちが、オフィスで当たり前のようにパソコンを使いこなしていた光景です。彼らが新入社員だった頃、職場にパソコンはまだ少なく、スマートフォンも影も形もありませんでした。業務の主役が「電話と紙」だった世代です。
そんな大先輩たちが、時代とともに現れた「パソコン」や「アプリ」を、長いキャリアの中で自分の道具として手懐け、当たり前に使いこなしてきた。その歴史を思えば、AIを使いこなすのも難しいことではない、と思えるのです。
テクノロジーの形が変わっても、人が新しい道具を使いこなして仕事をより良くしてきた営みは、ずっと地続きです。私たちの世代にとって、それがたまたま「AI」という道具になった。ただ、それだけのことなのだと思います。
人事として思うこと:「優秀さ」の要件は変わっていく
「組織と人」に関わる人事という仕事をしているので、最近は「AIという強力な道具を誰もが使えるようになったこれからの世界では、ビジネスパーソンに求められるものってなんなんだろう?」と考えてしまいます。
これまでは「知識をたくさん持っている人」や「特定の作業が速い人」が優秀だとされてきた側面は、少なからずありました。 しかし、これからの優秀な人の要件は変わるはずです。 そして、AIはこれからもっと進化していくでしょうし、AIの次にも、新しいテクノロジーがどんどん登場するはずです。その度に、人に求められることは変わっていくのだと思います。
そのときの「優秀さ」の要件が何なのかは、分かりません。 ただ、これまでの自分の得意に固執するのではなく、新しいことを自然に楽しく学ぶことができる人は強いと思います。加えて、テクノロジーで代替が難しい交渉・共感・巻き込みといった人間的な活動ができる人はより重宝されるような気がします。
今回の小さな挑戦は、そんな「これからの優秀さ」の片鱗に、期せずして触れる体験だったのかもしれません。
いくつかのツールが完成した今、人事部の「ちょっと惜しい、かゆいところ」は、自分たちの手でスッキリ解消されつつあります。なにより、「自分でできた」という達成感は、想像以上のものでした。
背中を押してくれたエンジニアさん、そして温かく見守ってくれる社内のみなさん、いつもありがとうございます。 これからもGROOVE Xのバックオフィスと組織のあり方を、少しずつ進化させていきたいと思います。






