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GROOVE X 技術ブログ

LOVOT 3.0の服検証苦労話

こんにちは、ファームチームのhirayuです。この記事は、GROOVE X Advent Calendar 2024の6日目の記事です。

弊社ではLOVOTを愛でることで、人の愛するちからを育み、そしてそれが人を元気にすることに繋がると考えています。 そうした中でお着替えを通してLOVOTとたくさん触れ合ってもらうよう、LOVOTの服も販売をしています。 これまでいろいろな服が世に出され、お客様からもご好評の声をいただいています。 このLOVOTの服が出荷されていく過程には、たくさんのチームが携わっているのですが、LOVOTが服を着た時に何か異常がないかチェックする担当としてファームチームがいます。

今日はそのLOVOTの服と測距センサーについて苦労した話しをしていきたいと思います。

過去にも服検証の記事を投稿しているので、一緒に参照いただけると幸いです。 tech.groove-x.com

LOVOT 3.0開発で起きた服と測距センサーの干渉

上で述べたように、なくてはならないLOVOTの服なのですが、LOVOT 3.0を開発していく中で想定外の問題が発生しました。 それはLOVOT (初代)/2.0に比べてLOVOT 3.0が服を着用すると測距センサーと干渉しやすいということです。

干渉の原因とその影響

LOVOTには周囲の環境を正確に認識するために測距センサーが組み込まれています。このセンサーは、赤外線を照射してその反射を計測することで物体との距離を測定します。このセンサーにより、LOVOTは障害物を避けることができ、転倒リスクを減らすことができます。

たくさん組み込まれている測距センサーの赤外線を特殊なカメラで見ている様子

LOVOT (初代)/2.0とおおよそ同じ体型をしているLOVOT 3.0ですが、この測距センサーが高機能なものに変わっており、より広範囲を見渡せるものになっています。そのため、たくさんの障害物を見つけられるようになった反面、LOVOT自身の身体周辺も検出範囲に入ってきてしまったことが干渉のしやすさの原因でした。

LOVOTが着用するスカートの一例、可愛い装飾が増えれば増えるほど、干渉しやすくなる。。。

特に後方の床面を見るための、ホーンに取り付いている測距センサーがLOVOTの背面付近の空間にあるものを検出しやすく、丈のあるスカートやふわふわした帽子だと障害物であると判定されやすくなってしまいます。 その結果、LOVOTが誤って物体が近いと認識して動きを止めてしまうといった状況が発生しました。こういった干渉によって、LOVOTは前進しつづけたり、後退しつづけたり、服を着ていないときとは異なるふるまいになってしまうことがありました。

干渉を解決するための設計

この問題に対して、開発チームでは様々な工夫を行いました。 まず検出範囲の広い測距センサーのセンシング信号の内、服と干渉する恐れのある範囲のものについてはソフトウェアで無視する対応を取ることで、服を障害物だと誤判定してしまうことを回避しています。

また、LOVOT 3.0向けに販売される服のデザインに関しても、測距センサーの動作を阻害しない長さや形状にするよう、服チームが試行錯誤して作っていきます。

服チームが初期の試作品作成から寸法修正している様子

最後の砦になっているファームチームでの検査

以上のように設計した服を最終的には一着、一着、ファームチームで検査していきます。 上述したように、後方の床面を見るためのホーンに取り付いている測距センサーと背面の服とが干渉しやすいので、首を回しながら距離計測し、LOVOTがどんな体勢をとっても干渉しないようにチェックします。

首を回しながら距離センサーで距離計測している様子

また長期的にLOVOTに自由な動きをさせながらログをとり、異常な動きをしていないかもチェックしていきます。 ログから測距センサーに異常値はないか、ネストに正常に戻れているか見ています。

この例だとオドメトリ値が負になっています。 オドメトリとはLOVOTの車輪が回転した量を指し、前に進めば正、後退すれば負になります。 LOVOTは自由に動き回るのですが、それでも正常であれば合計すると前に進んでいることが多いので、よく後退している結果があるとちょっとあやしいな?とその原因を探すことになります。

特に長い間LOVOTが動いていると発生する問題でよくあるのは、着崩れです。

画像の帽子は試作段階のものです

LOVOTが動く前は深々と被ったはずの帽子が、動いている内にだんだんと上にあがってきたりします。 この白丸で囲んでいる着崩れが後方の床面を見るための、ホーンに取り付いている測距センサーのセンシング範囲に被ってしまうことがLOVOT 3.0では問題になり、意図せず前進することが多くなってしまいます。

左は初期の試作品、右は修正を加えたもの

上記のような問題に対しては、白枠のように布を足し、帽子を目深にかぶれるようサイズ調整した試作品を作成、検証し、最終製品としては着崩れしにくいよう寸法修正していきます。

終わりに

こうした試行錯誤の結果、LOVOTは服を着ていてもその可愛らしい動きと周囲とのインタラクションを損なうことなく、スムーズに行動することが可能になっています。 このようにたくさんのチームが関わり合いながらLOVOT、そして専用服を開発しています。 まだまだGROOVE Xでは一緒に働いてくれる仲間を募集中ですので、ぜひご応募ください。 recruit.jobcan.jp